State / Todd Rundgren
POPS
トッド・ラングレンの2013年リリースのデジタル・ロック寄りの作品。
ジャケットがゴーグルを付けたトッドの顔写真という、何とも妙な趣向だ。
ジャケット裏には同じ写真(色違い)の横にWRITTEN, PRODUCED & PERFORMED BY TODD “DJ ODD” RUNDGRENと記されており、DJのつもりらしい。
実験的な作風
トッド・ラングレンは、元々コンピュータ使いとしても(ミュージシャンの中では)卓越した腕前を持っているらしい。
打ち込みの率が高い作品としては1993年の『ノー・ワールド・オーダー』が挙げられるが、本作品の音は、『ノー・ワールド・オーダー』に通じるものがある。ドラムがやたらとバシバシたたくように聴こえる感じがある。
これ以降にリリースされたアルバムとしては、同じ傾向の打ち込み中心の作品として”Global”(2015)と”White Knight”(2017)があるが、このアルバムのサウンドはそれらの中では少し閉塞感があるのが特徴か。
聴いていて爽快感というのは余りない。じっくりと忍耐して味わうことだ。
ドイツテクノ系のサウンドにおけるプライベートスタジオ普及以降の音楽パッケージ
音としては、私の知る範囲では、ギター入りの音楽としてはナイン・インチ・ネイルズの『ウィズ・ティース』に近い。
音のくぐもり具合としてはマウス・オン・マーズに近い。
ドイツ系アナログモノシンセにドライブ感のあるエフェクト(アナログのシンセモジュールのエフェクトモジュールを使う)をかけて使っていると思われる。特にベースで多用される。
細くてクリップ気味の特徴のある音で(音が割れているということ)、ナイン・インチ・ネイルズではエレキギターと組み合わせて使われている。この手の音楽ではこれは良しとされている。
音が細いのは、モジュールの稼動電力が低いせいだ。昔のアナログシンセとはそこが違っている。
ドイツ系のクラブサウンド向きアナログシンセモジュールのメーカーが製品を稼動電力低めで作るのは、コストの問題があるからだと思う。
低めで作ったほうが安くあがるのだろう。
リバーブにもクリーンなスタジオ仕様のエフェクターは使用していないようで、もう少し曇った質感だ。
全体的に音が悪いが、これも雰囲気があって良しとされる。
プライベートスタジオが普及してから、この手の音質低めの低予算なサウンドのままパッケージ化される作品が一般に多くなっているが、個人的には余り歓迎していない。
とはいえ、音楽全体はさすがトッドだ。うならざるを得ない。