Global / Todd Rundgren

POPS

トッド・ラングレン2015年のアルバム。

EDM寄り、と評されることもあるが、筆者はEDMは余り聴かないので、「EDM寄り」なのかどうかは良く分からない。

単純にデジタル・ミュージック寄りだと思っている。

歌もののロックに近い線の陰陽交えた構成

スタジオ録音としては、この一作前が“State”となる。

本作は”State”の路線の延長線上にあるが、全体にエネルギーが外へ向かった音楽で、歌ものとしても十分味わいがある叙情味のある曲が含まれている。
“State”で行われたデジタル・ロックを融合する実験がうまく消化され、ヴォーカル入り楽曲として結実しているように思う。

個人的には、叙情味のある歌に関しては、雰囲気が”2nd Wind”(1991)や”Nearly Human”(1989)に通づるものがあると思っている。

トッドのアルバムは、一回聴いただけでは良く分からないことが多く、その意味ではこのアルバムも例外ではない。陰陽織り交ぜた構成になっており、引っかかるところは一杯ある。

本作でのエレクトリック・サウンドの意味

エレクトリック・サウンドとして分かりやすい効果という意味では、ヴォコーダーが使われている。
(ヴォコーダーを採用した勢いなのか、日本版にのみ、ボーナストラックとしてYMOの”Technopolis”のカバーが収められている。こちらは軽く作ったという感じで、聴く価値があるというほどではないが、ヴォコーダーと言えばこの曲、という意味で海外でも有名なのだろうか。)

一曲目は割とストレートな曲調なので、アルバム全体の音は基本エレクトリックだが、まあ入りやすいとは言える。

シンセ音やデジタルのリズム体が、音楽をそぎ落とし、聴く側の感情の高まりを抑制する効果を出しており、単純に、聴いていて快感である、という感じではない。だが、音楽がロックなのも相まってか、中毒性がある。

シンセにはクラブミュージック向けのデジタルシンセが使われていると思う。エンジニアリングで何とか存在感を出そうとしているようだ。
この点は、一般に、似たタイプの音楽でも、2017年の今日でも適切な回答はないように思う。アナログシンセには勝てないのだ。

“State”の時は、リバーブなどで、ドイツテクノ寄りの、靄がかかったように音が濁る効果を良しとしていた。
対して、今回は余り濁ったリバーブ成分を盛り込み過ぎず、聞き取りやすいサウンドを主眼としているようだ。

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