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『僕だけがいない街』

今年(2016年)の1~3月に放映されたアニメ。
原作の漫画がヒットしており、実写映画化もされ、本アニメ放映期間とほぼ同時期に公開された。

主人公が生まれつき持っている能力を使い、過去に遡って、不可解な幼児殺人事件を解決しようと試行錯誤するミステリー風ドラマだ。

アニメでは各話にみなぎる緊張感がすごい。
主人公が記憶のフィルムを巻き戻して過去を思い出すシーンでは、実際にその心象風景に吸い込まれていくような感覚を味わえる。
アニメの即物的な効果だ。

キャラクターデザインがリアルになってから以降のアニメは、現実世界の描写にも耐えられるようになっている。
アニメで現実世界を描く場合、現実の人間が演じない分、心理描写がやりやすいというおまけがつく。絵の奥に人物の心理状態が透けて見えるのだ。

ストーリーも重層的でよくできているのだが、登場人物の内面の描写に重きが置かれており、推理小説からの影響が色濃く感じられる。

日常ドラマに少しだけSFの要素が入っている作品が、映画でも漫画でも当たり前になっているが、この作品も、そういった時代の中で生み出された傑作と言える。

「ちょっとだけSFが当たり前に入っている日常ドラマもの」では、SF部分にはなぜなのかという理屈付けははあまり無いのが特徴だ。
この作品で言うと、主人公は、普通に日常を過ごしていて後悔するような体験を何かしたとき、それをリセットできる時点まで自動的に時を遡る能力を持っているのだが、それが「なぜか」という説明は作中に現れない。

なお、SF設定の部分からドラマが生まれるという手法は使われているが、この作品のドラマ展開は、それだけに頼ってはいない。SFの部分以外に、登場人物の生き様や信念がちゃんと描かれていて面白いのだ。

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