『弱キャラ友崎くん Lv.1』
小学館のガガガ文庫から出版された、新人作家(2016年6月現在)によるライトノベル作品。
ライトノベルを読んだのは初めてなのだが、わりと衝撃を受けたので評を書いてみる。
「わりと」というのは、著者の屋久ユウキさんには悪いが、つい文学と比べてしまうくらい、活字メディアとして刺激的で、面白かったのだ。
読後に、余韻をこれ程引きずるとは思わなかった。
この作品を知ったのは、愛好する絵師(この場合イラストレーター)のフライさんが挿絵を担当していたからだ。
上掲の表紙絵も当然フライさんの手によるものだが、素敵さがうかがえるかと思う。
【 参考記事 】
◆フライ先生のサイト:cococo
◆フライ先生のイラストについての記事:初夏の気分でもう一枚
『弱キャラ』とはどういう意味なんだろう、というのが、書籍情報を得た時の第一印象だった。
情報を辿って行くと、ガガガ文庫が『月刊ガガガチャンネル』というネット番組をニコニコ動画で配信していて、著者が出演する回が配信済みで見られることが分かり、見た。
カラオケのバイトリーダーと兼業しているとのこと。
活字によるフィクションは、ここ20年ほど読んでいなかったが、珍しく読んでみようという気になった。
書籍には、フライさんの挿絵がカラーでも入っていて、商品パッケージとして魅力を感じたというのも決定的だった。
「買えばこれを自分のものにできる」という感覚だ。
書店を3箇所回ってみたが、作家の評価が確定していないせいか(一作目なので当たり前だが)、見つかったのはそのうち一店でだった(後日、回ったうちのもう一店にも置いてあったことが分かったが、場所が分かりにくく、このときは気づかなかった)。
棚ではなく、平積みのスペースに4冊置かれていた。
物語は、あるゲームの実力が国内1位の、人生に絶望しているオタク少年友崎文也が、同じゲームでランキング2位のリア充の女の子日南葵とオフラインで出会い、彼女の指南により、人生に意味を見出していくというものだ。
軽快なコメディとして描かれている。
主要な登場人物として、女の子が日南葵以外に数人出てくるのだが、読んでいて辟易しない程度にリアルに、一方で美化しすぎない程度にかわいく描かれていて、その加減が絶妙だ。
絶望からスタートするというのは、ポップスの歌詞でも90年代以降定着しているテーマだ。
この作品は、第10回小学館ライトノベル大賞・ガガガ文庫部門受賞作で、応募時のタイトルは『満点飾りのがんばり論!』という。
物語でがんばり論を唱えているのは葵さんだ。
語り手はがんばり論を実践する友崎君の方なのだが、ここから察するに、どうも主人公は葵さんのようだ。
発売から間もない割には(現時点で1ヶ月)、ネット上のいろいろなところで書評が投稿されている。
総じて好意的な評が多いようだ。
細かいことはともかく、着想がすばらしいので、ほかに似た作品は、世の中広しと言えども、ないだろうと感じている。
著者によると、続刊も執筆中とのことなので、楽しみだ。
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